生産者としての生き方 生産者としての生き方

PRODUCERS DELIGHT PRODUCERS DELIGHT

ISSUE01 NORAKURA FARM ISSUE01 NORAKURA FARM

生産者のよろこび - 長野県のらくら農場 生産者のよろこび - 長野県のらくら農場

地球人倶楽部が取り扱う商品をつくる生産者の方々を紹介する「PRODUCERS DELIGHT(プロデューサーズ ディライト・生産者のよろこび)」。彼らは日々どのような思いで、食べるものと向き合い、活動をしているのか、写真と動画で紹介するドキュメントです。

長野県の東部、雄大な北八ヶ岳を望む佐久穂町で、有機農業を営んでいる『のらくら農場』。約25年前、関東で会社員をしていた萩原紀行さんが、「(奥様と)2人でこっそりと始めた」農場だ。繁忙期には20名弱のスタッフと共に、約80枚の畑で50品目程の野菜を手がけている。栄養価コンテストで最優秀賞を受賞するほど、栄養価の高い野菜を栽培するかたわら、「TED×SAKU」などでの講演や著書「野菜も人も畑で育つ」を出版するなど、精力的に活動し話題を集める萩原氏。真夏の日差しが厳しい季節に彼らを訪れ、様々な話しを聞いた。

科学と感性が高次元で融合する農業 科学と感性が高次元で融合する農業

のらくら農場の野菜は栄養価の高いものが多く、ケールやカブなど、コンテストで最優秀賞を受賞している種類も多い。その理由を代表の萩原さんに聞いてみた。「僕らは科学と感性を結構融合させた農業をおこなっています。お客さんに”おいしい”と言ってもらうのが一番ですが、その裏に隠されている栄養価の高さとかっていうのはかなり狙ってやってます。肥料設計をおこなうんですが、土を採取してきて冬の間にこう試験管のセットで土の分析を自分たちでするんですね。パソコンで解析して自分たちが持ってる有機資材をテトリスのように組み合わせて、菌の働きとかミネラルの相互相乗効果とか拮抗とか反発する作用とかいろいろあるんですけど、それを全部計算に入れながら畑一枚一枚設計していくんです」。
土壌分析と並んでのらくら農場が大切にしていることは”生育診断”。医療でいうところの、望診、触診だ。「見て、触れて、葉の色、角度、硬さ、身の具合など、様々な観点から、マグネシウム、マンガン、微量ミネラルなど、今この野菜には何の栄養価が足りないのか、というところを判断します」。土壌分析の西洋医学的観点と、生育診断の東洋医学的な観点。両方持つことで、美味しく栄養価の高い野菜が生まれている。「各作物でだいたい10項目くらい確認するポイントがあります。今50品目くらい作っているので、トータルで500項目くらい、チェックしながら野菜づくりをおこなっています」。トマトを少し誇らしげに眺めながら萩原さんが教えてくれた。

医食同源 - 農業+栄養学 医食同源 - 農業+栄養学

長野県佐久市は長寿のエリアとしても知られている。その理由としては諸説あるが、栄養価の高い野菜を豊富に食べる習慣があるからだ、という話を聞いたことがある。また、雨が少なく日照時間も全国トップクラスに長いのがこの土地の特徴のひとつ。太陽のエネルギーをぞんぶんに浴びて、のらくら農場の野菜はつくられている。「実は今僕が目指してるのが、医療と栄養学と農業の距離を縮めるっていうのがあるんです。例えば市販の人参の抗酸化力を5とすると、うちの賞をいただいたケールは500くらいの数値になります。もう薬に近くなってるんですね。医食同源という言葉がありますが、まさにその境地。実際お客様にもお医者さんも多かったりします」。

のらくら農場の野菜は栄養価だけでなく、味にもこだわって作っているという。圃場長の佐々木拓弥さんが話してくれた。「収穫するまでは色々なことがあるのでドキドキしますが、収穫して味見をして美味しいときは、”よしっ”ってすごく嬉しくなります。のらくら農場の野菜は、甘みだけじゃなく、旨みにもこだわっています。主にタンパク質をコントロールすることで、旨みを出すんですが、試行錯誤を繰り返しながら、少しでもおいしい野菜をお客様にお届けできるようにがんばっています」。採れたての野菜をいただくと、普段食べている野菜よりたしかに甘みがあるのがわかる。献立を考えるのも楽しくなりそうだ。

決して怒らない農場の秘密 決して怒らない農場の秘密

「のらくら農場はどんな農場なのか」という質問をスタッフに投げかけてみると一様に「怒らない農場」という答えが返ってくる。 疑問が浮かび説明を求めると代表の萩原さんは丁寧に教えてくれた。

「うちの農場、怒るの禁止ってルールがあるんです。怒るの禁止っていうのは我慢するっていうのとはイコールじゃなくて、何か不具合が起きたとき、解決策を出して解決しようとすることです。ミスは起こる。ミスが起きても隠さないでむしろミスを拾いあう。そうすると、”それ僕やっちゃったかもしれません”とか”私がやったかもしれません”という言葉が出るようになったんですね。すると、どんどんアイデアが生まれてきていい流れになりました」とのこと。またミスした人を責めるのではなく、「ちょうどいい。せっかくの機会だから、こういうふうにやってみよう」と、解決へ向けた行動に移りやすいよう、問題が浮上したことを"良い機会"と捉えるように心がけているそう。 今でもそれは徹底され、スタッフの間にも浸透しているらしい。

地球人倶楽部との出会い

長野県の冬は厳しい。特にのらくら農場は標高およそ1000mの場所にあり、マイナス15〜20度にもなる。当然、農作は難しく冬におこなえるビジネスとして、人参、じゃがいも、かぼちゃの3種類の野菜と玄米のレトルトスープを作った。その時に、コンタクトしたのが地球人倶楽部だったという。「ネットで調べて会いに行ったのが始まりなんですが、快く受け入れてくださって感謝しています。そこから野菜も売らせていただくことになりました。何かトラブルに直面したときも一緒に考えてくださる会社さんで助かっています」

長野県南佐久郡佐久穂町畑5645

長野県の佐久穂町の有機栽培の農場。約7.5ha、50品目を取り扱う。土壌分析と生育診断によって、栄養価が高く、美味しい野菜を栽培する。2019年、オーガニック・エコフェスタで開催される栄養価コンテストで3部門にわたり最優秀賞を受賞し、総合グランプリを受賞。2020年はケール部門で2連覇。農業界のイノベーターとして、消費者・商業者から注目を集めている。

代表 萩原紀行氏

地球人倶楽部の有機野菜