バスの運転手から、みかん農家へ。100年つづく海辺の斜面を受け継いだ、井上みかん農園

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愛媛県の西の端、佐田岬半島の付け根にある八幡浜市。その川上町の上泊(かみどまり)という地区に、宇和海に面した斜面いちめんにみかんが植わる農園があります。井上みかん農園です。

10月下旬から、地球人倶楽部のオンラインストアで、この農園のみかんの扱いを始めます。まずは、約10kg箱入りの早生みかんを、10%OFFのセール価格でご用意しました。商品のご案内は、記事の終わりにあります。今日は、そのみかんをつくっている人と畑の話を、先に紹介させてください。

枝になるみかんと、割った断面
枝になるみかんと、割った断面

川上町で、100年以上つづくみかん農園

井上みかん農園は、川上町で100年以上続く農園です。園地は1.5ヘクタール。早生(わせ)の温州みかんが1.0ヘクタール、南柑(なんかん)20号が0.5ヘクタールで、生産量は80トンにのぼります。

育てている品種は、2つ。9月から出回りはじめる早生(わせ)の温州みかんと、上泊のジュースの原料にもなっている南柑20号です。

両手にのせた、収穫したてのみかん
両手にのせた、収穫したてのみかん

畑があるのは、海に面した段々の斜面です。宇和海を眼下に見ながら、収穫の季節には、枝先までオレンジ色の実がついた木が、斜面に並びます。収穫は、農園のみなさんの手作業です。写真の中でも、みなさんが木のそばで、ひとつずつ丁寧にみかんを収穫しています。

海を望む斜面で収穫する園主
海を望む斜面で収穫する園主

「三つの太陽」に照らされる斜面

海に面した段々畑には、みかんにとって、うれしい条件がそろっています。西宇和(にしうわ)地域の産地では、それを「三つの太陽」と呼んでいます。

  • 空から降りそそぐ太陽
  • 海の水面に反射して届く太陽
  • 段々畑の石垣に反射して届く太陽

急な斜面は水はけがよく、そのうえ、空・海・石垣と、三方向から光が当たります。この産地のある「愛媛・南予の柑橘農業システム」は、段々畑や、地域で受け継がれてきた農の文化が評価され、2019年2月に日本農業遺産に認定されています。

海からの反射光については、同じ八幡浜市内の別の園地(真穴)で、日射計を使った実験が行われています。海からの反射光が当たる場所と当たらない場所を1〜2週間比べたところ、照度は最大でおよそ1.8倍もの差があったそうです(JAにしうわの紹介記事より)。場所は違いますが、この「三つの太陽」は、井上みかん農園の斜面にも当てはまる、と園主の井上さん自身も話しています。

5代目から、6代目へ。「第三者継承」という選択

この農園の歴史には、ひとつ、めずらしい転機があります。

長く園主をつとめてきたのは、5代目の田中愛三(あいぞう)さん。田中さんは、草を生やして土をつくる「草生(そうせい)栽培」を取り入れ、土づくりにじっくり取り組んできた人です。

その農園を2022年に引き継いだのが、6代目の井上大佑(だいすけ)さん。血縁ではなく、外から農園を引き継ぐ「第三者継承」という形でした。農業の世界では、跡を継ぐ人がいない畑が少なくありません。100年以上かけて育てられてきた畑と、その土づくりの技術が、次の世代へ、ちゃんとつながった。それだけでも、うれしい話だと思います。

井上さんは、もとはバスの運転手をしていた人です。2020年にJAで農業研修を受け、その後、田中さんの栽培方法に共感して、その畑で学びはじめました。そして2022年、全園地を引き継ぎます。運転席から、みかんの斜面へ。人生の舵を大きく切って、100年以上続く畑の6代目になりました。

農園のみなさん
農園のみなさん

農園の方針は、とてもまっすぐです。

良質な土づくりで美味しい温州みかんを作り、次世代へ継続する。

取り組み① 草を生やして、土を育てる(草生栽培)

井上みかん農園の畑を見ると、木の足もとが、草や枯れ草で覆われていることに気づきます。これが草生栽培です。

草が土の表面を覆うことで、土が雨に流されるのを防ぎ、根を張った草が土の栄養を保ち、ほかの雑草が伸びすぎるのを抑えます。農園では、この草の力を借りて、土そのものを育てています。

たとえば、2024年の秋に、ヘアリーベッチという草を植えました。豆の仲間で、根に住む根粒菌が、空気中の窒素を取り込んで土を肥やしてくれる草です。

  • 2025年1月:木の周りに、びっしりと広がる
  • 2025年4月:紫色の花が咲く
  • 2025年7月:枯れて、マルチ(土を覆う敷き草)のように、地面の保温・保湿をする

農園の資料では、ヘアリーベッチの働きとして、次の4つが挙げられています。

  • 緑肥(りょくひ:肥料分を土に補うために育てる植物)として、空気中の窒素を木に届ける
  • 土に漉き込んで、土を豊かにする
  • 雑草が伸びるのを抑える
  • 枯れたあと、マルチとして土を覆う

季節ごとに姿を変えながら、最後は敷き草として畑を守る。ひとつの草が、1年をかけて、土の世話係をしてくれます。

取り組み② 土の中の微生物を、味方にする

もうひとつの柱が、微生物を生かす農法です。農園では、農薬や化学肥料を抑えることで、土を微生物が住みやすい環境に整え、さらに、農業に向いた微生物の資材を使って、土を改良しています。

使っているものを、いくつか挙げると、こんな具合です。

  • 牛糞堆肥:愛媛県西予市の野村町堆肥センターのもの。毎年冬に、全園地へ入れています。
  • えひめAI:愛媛県産業技術研究所で開発された環境浄化資材。納豆菌、乳酸菌、酵母菌などが有機物を分解し、土の改良に役立ちます。
  • 宇和海のひじき:地元の漁師さんが、これまで捨てていた欠片のひじきを譲ってくれたもの。限られた区画で、実験的に畑にまいています。

海の近くの畑ならではの、地元の資源をめぐらせる取り組みです。畑のとなりの海が、みかんの土づくりにもつながっているのは、なんだか気持ちのいい話だと思います。

取り組み③ 摘果をしない栽培

みかんづくりでは、実を大きく育てるために、若い実を間引く「摘果(てきか)」という作業をするのが一般的です。井上みかん農園では、これをしていません(無摘果)。

農園によると、土の健康に力を入れてきた結果、摘果をしなくても、ほぼ木全体に栄養が行きわたるようになったといいます。そして、実のなる年とならない年が交互にくる「隔年結果」が出にくく、年ごとの収量が平らになりました。収穫の季節には、枝先まで鈴なりになった木が、斜面に並びます。

極早生で、糖度12度を超える

いちばん早く出荷される「極早生(ごくわせ)」のみかんで、井上みかん農園では、糖度が12度を超えるといいます。極早生みかんの糖度は、一般的には8度ほど。それと比べると、ずいぶん甘い仕上がりです。海からの光、草と微生物で育てた土、摘果をしない木の力。この畑の積み重ねが、甘さに表れているのかもしれません。

木の上で、みかんを手にのせて
木の上で、みかんを手にのせて

認証と表彰

井上みかん農園は、2025年9月1日に、愛媛県から「えひめエコファーマー」の認定を受けました。エコファーマーは、化学肥料や農薬の使用を減らすことなどに取り組む農業者を、県知事が認証する制度です。

ここで、正直にお伝えしておくと、井上みかん農園のみかんは、有機JAS認証のみかんではありません。化学肥料・農薬の使用を減らす取り組みが認められた農園、という位置づけです。

また、2023年には、「えひめ愛顔(あいがお)セレクション」でスペシャルアワードを受けています。受賞したのは、上泊の南柑20号の小玉を使った濃厚なジュース「上泊 KAMIDOMARI」で、受賞の紹介文には、「上泊の地で『土づくり』を大事にみかん栽培に取り組んでいる」「南柑20号の小玉を使用した、コクと甘味が感じられる濃厚なジュース」と紹介されています。

産地視察でわかったこと

2025年10月2日、取引先が産地を視察しました。その報告から、いくつか紹介します。

  • 井上農園の畑は、草生栽培のおかげで、地面が枯れ草に覆われていた。
  • 早生みかんの糖度は、この時点(まだ果皮が緑のころ)で、11.5度だった。
  • 早生と南柑20号のどちらも、枝に、たくさんの実がなっていた。

収穫前の10月初めの時点で、すでに糖度が11.5度。これから色づき、収穫の時期を迎えるまでの間に、みかんが、どんな味に仕上がっていくのか。私たちも、今から楽しみにしています。

地球人倶楽部が、この農園を紹介する理由

地球人倶楽部は、野菜や果物を選ぶときに、畑で何が行われているかを、大切にしてきました。どんな土で、誰が、どんな考え方で育てているのか。

井上みかん農園には、土づくりという、はっきりとした軸があります。バスの運転手だった人が、5代目の栽培に共感して学び、100年以上続く畑を受け継いだ。そして、草や微生物、地元の海の恵みまで生かして、土を育て続けている。そんな話を聞いて、このみかんを、地球人倶楽部のお客様にもお届けしたいと思いました。

いつから買えるの?

10月下旬から順次お届けする、約10kg箱入りの《無摘果》早生みかん(S・Mサイズ中心)を、10%OFFのセール価格で販売しています。価格は、商品ページでご確認ください。

井上みかん農園の早生みかん10kgを見る →

冬のこたつのお供に、みかんの季節がやってきます。愛媛の海辺の斜面で育ったみかんが、どんな味なのか。ぜひ、お試しください。

※この記事の数字・年月は、取引先(沢井青果)からいただいた資料「井上みかん農園のご案内」(2025年10月4日)と、園主への聞き取りに基づいています。「三つの太陽」の説明と反射光の実験は、JAにしうわの紹介記事「3つの太陽の効果とは?」(2021年10月12日)によります。

有機野菜の宅配サービス「地球人倶楽部」

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