
塩麹 ※写真はイメージです
塩麹がブームになったのは十年以上前のことで、いまは台所に定着した調味料になりました。ただ「塩の代わりに使えばいい」と思って使うと、味が決まりません。塩麹は塩ではないからです。何をしている調味料なのか、仕組みから見ていきます。
塩麹の塩分は、塩の三分の一ほど
いちばん誤解されやすいのがここです。塩麹の塩分濃度はおおむね12〜13%前後。対して食塩は、当然ながらほぼ100%です。
つまり塩小さじ1の代わりに塩麹小さじ1を入れると、塩分は大幅に足りません。「塩麹を使うと味がぼやける」と言われるのは、多くの場合これが理由です。置き換えるなら、重量で2〜3倍が目安になります。
塩麹は塩ではありません。塩分は三分の一ほどです。
そして塩麹には塩以外のものが入っています。麹がつくった酵素、アミノ酸、そして糖。この三つが、塩だけでは出せない働きをします。
肉がやわらかくなる理由
塩麹に漬けた肉がやわらかくなるのは、プロテアーゼという酵素の働きです。たんぱく質を分解する酵素で、麹菌がつくります。筋肉のたんぱく質がゆるみ、食感がやわらかくなる。
同時に、分解されたたんぱく質はアミノ酸になります。アミノ酸は旨みそのものです。だから塩麹に漬けた肉は、やわらかくなるだけでなく味が濃くなる。やわらかさと旨みが同時に来るのは、同じ反応の裏表だからです。
ただし、やりすぎると崩れます。分解が進みすぎると身がぼそぼそになり、表面が溶けたようになります。鶏むね肉なら数時間から一晩、白身魚なら30分から1時間。「漬けるほどよい」ものではありません。

焦げやすい、という副作用
塩麹には糖が含まれています。麹がでんぷんを糖に変えているからで、甘酒と同じ仕組みです。
糖はこげます。塩麹に漬けた肉を強火で焼くと、中まで火が通る前に表面が黒くなる。漬けだれを軽く拭ってから、弱めの中火で焼く。これだけで失敗が減ります。
逆にこの性質を使えば、照りと焼き色がきれいに出ます。仕組みを知っていれば、欠点は使いどころになります。
塩麹は、新しい調味料ではありません
塩麹が広く知られるようになったのは2011年ごろのブームからです。そのため新しい調味料だと思われがちですが、麹と塩で食材を漬ける方法は、ずっと以前から各地にありました。
東北には「三五八漬け」という漬け床があります。塩三、麹五、米八の割合で仕込むことからこの名前がついた、と言われます。魚も肉も野菜も漬けられる万能の床で、やっていることは塩麹とほぼ同じです。
麹を使えば、塩だけで漬けるよりやわらかく、旨みが出る。この経験則は、酵素という言葉が知られるずっと前から共有されていました。
ブームで広まったのは名前と使い方であって、仕組みそのものは新しくありません。台所の道具として長く残っているものには、たいてい理由があります。
麹の調味料は、塩麹だけではない
同じ考え方で、醤油や玉ねぎを使ったものもあります。土台は同じで、塩の部分を何に置き換えるかが違うだけです。
- 塩麹
- 米麹+塩+水。いちばん素直で、下味にも仕上げにも使えます。素材の味を邪魔しません。
- 醤油麹
- 米麹+醤油。旨みが強く、そのままかけるだけで一品になります。冷奴、納豆、卵かけご飯に。
- 玉ねぎ麹
- 米麹+塩+すりおろした玉ねぎ。洋風の料理に合い、スープやソースのベースになります。
- レモン麹
- 米麹+塩+レモン。酸味と香りが加わり、魚や鶏に向きます。
生きている調味料として扱う
市販の塩麹には、加熱処理してあるものと、していないものがあります。
加熱済みのものは、酵素が止まっています。味は塩麹ですが、肉をやわらかくする働きは期待できません。常温で長く置けるかわりに、そこは失っています。
「生」と書かれたものは酵素が生きています。冷蔵が必要で、置いておくと発酵が進んで味が変わる。肉や魚をやわらかくする目的なら、生タイプを選んでください。
自家製の塩麹も当然、生です。仕込んでから熟成が進むので、一週間目と一ヶ月目では味が違います。変わっていくものだと思って付き合うのが正解です。
塩麹を使うときの目安
01
塩の代わりにするなら2〜3倍
塩分は塩の三分の一ほど。同量では味がぼやけます。重量で考えてください。
02
肉は一晩、魚は30分〜1時間
漬けすぎると身が崩れます。「長いほどよい」ではありません。
03
焼く前に、漬けだれを拭う
糖が入っているので焦げます。拭ってから弱めの中火が基本です。
04
やわらかくしたいなら「生」
加熱処理済みのものは酵素が止まっています。表示を確認してください。
05
開封後は冷蔵、清潔なスプーンで
生きている調味料です。濡れた箸を入れると傷みます。
まとめ
塩麹は塩ではありません。塩分は三分の一ほどで、代わりに酵素と旨みと糖が入っています。
やわらかくなるのも、旨みが出るのも、同じ酵素の働きです。そして糖のせいで焦げやすい。この三つを知っていれば、失敗はほとんど防げます。
置き換える調味料ではなく、別の調味料として覚えるほうが早い。塩の棚ではなく、味噌や醤油の隣に置くものだと考えてください。
麹の調味料
塩麹と、麹からつくられたものを並べました。
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