
朝の食卓 ※写真はイメージです
腸活というと、ヨーグルトや乳酸菌飲料を毎日ひとつ、という話になりがちです。けれど近年の研究がそろって指しているのは、「何を入れるか」より「どれだけ種類があるか」のほうでした。日本の食卓は、この点でもともと有利にできています。
菌は、住み着かない
外から食べた菌の多くは、腸に定着しません。数日で通り過ぎていきます。これは失敗ではなく、そういうものです。
では意味がないのかというと、そうではない。通り過ぎるあいだに、もともと住んでいる菌に働きかけます。短鎖脂肪酸のもとになったり、腸内の環境をわずかに酸性に傾けたり。だから「毎日つづける」ことに意味があります。住民を増やすのではなく、通行人を切らさないという感覚に近い。
菌は住み着かない。だから、毎日つづけることに意味があります。
大事なのは、種類の数
腸内には千種類ちかい細菌がいるとされ、その顔ぶれは人によって違います。指紋のようなもので、同じ組み合わせの人はいません。
そして近年わかってきたのは、菌の種類が多い人ほど、腸内環境が安定しやすいということです。種類が少ないと、何かのきっかけでバランスが大きく傾きやすい。森と同じで、一種類の木だけの林より、雑木林のほうが強い。
ここから導かれる結論は単純です。ヨーグルトを毎日たくさん食べるより、味噌・納豆・漬物・ヨーグルトを少しずつ、いろいろ。量を増やすより、顔ぶれを増やすほうが理にかなっています。
そして「菌のエサ」
もうひとつ、菌そのものより見落とされているのがエサです。腸内細菌は食物繊維やオリゴ糖を発酵させて、短鎖脂肪酸をつくります。これが腸の細胞のエネルギーになる。
菌だけ入れても、エサがなければ働きません。発酵食品とあわせて、野菜・海藻・きのこ・豆・穀物を食べる。この組み合わせで初めて成立します。
- 水溶性食物繊維
- 海藻、大麦・もち麦、ごぼう、オクラ、果物。発酵されやすく、短鎖脂肪酸のもとになります。
- 不溶性食物繊維
- 根菜、豆、きのこ、玄米。水を含んでかさを増し、腸を物理的に動かします。
- オリゴ糖
- 玉ねぎ、ごぼう、大豆、バナナ。消化されずに大腸まで届き、菌のエサになります。
- 発酵食品
- 味噌、納豆、ぬか漬け、甘酒、ヨーグルト。菌そのものと、発酵で生まれた成分の両方が入ります。

一汁三菜は、よくできている
ご飯、味噌汁、主菜、副菜。この形は、腸活の観点からよくできています。
味噌汁で発酵食品と、具の野菜・海藻・きのこを同時にとれる。ご飯は穀物で、玄米や雑穀にすれば食物繊維が増える。副菜が漬物なら、発酵食品がもうひとつ加わります。
特別なものを買い足さなくても、この形を守るだけで「菌の種類」と「菌のエサ」が両方そろいます。腸活という言葉ができるずっと前から、日本の食卓はこれをやってきました。
日本人の腸には、海藻を分解する菌がいる
2010年に学術誌ネイチャーで報告された、よく知られた研究があります。日本人の腸内細菌の一部が、海藻の食物繊維を分解する酵素の遺伝子を持っていた、というものです。
この酵素は、もともと海の細菌が持っていたものでした。海苔やわかめを食べる習慣のなかで、海の細菌が持っていた遺伝子が腸内細菌に受け渡されたのではないか、と考えられています。比較対象となった北米の人からは、同じ遺伝子はほとんど見つかりませんでした。
すべての日本人に当てはまるわけではありませんし、一人ひとりの腸内細菌は食生活で変わります。ただ「何を食べてきたか」が腸の菌の顔ぶれを形づくるということを、これほど分かりやすく示した例は多くありません。
味噌汁のわかめ、ひじきの煮物、海苔。取り立てて健康食品として扱われてこなかったものが、日本の食卓では毎日のように登場します。腸活のために新しいものを買い足す前に、このあたりを切らしていないか見てみるほうが早いかもしれません。
やりすぎると、逆に苦しくなる
食物繊維は、急に増やすとおなかが張ります。発酵が盛んになってガスが出るためで、悪いことが起きているわけではありませんが、不快なものは不快です。
とくに水溶性食物繊維やオリゴ糖を一気に増やすと、これが起きやすい。「体にいいから」と初日から大量に食べるのではなく、二週間かけて少しずつ増やすほうが、結果として続きます。
もともとおなかが弱い方、張りやすい方は、合わない食材が個別にあることもあります。体調に不安があるときは、自己判断で続けずに医師にご相談ください。
毎日の食卓でできること
01
発酵食品を「いろいろ少しずつ」
味噌汁・納豆・漬物・甘酒。一種類を大量にではなく、二〜三種類を毎日。
02
味噌汁の具を毎回変える
わかめ、豆腐、きのこ、根菜。具を変えるだけで、菌のエサの種類が増えます。
03
主食に食物繊維を足す
白米に麦や雑穀を混ぜる。一番手間がかからず、毎日つづく方法です。
04
味噌汁は火を止めてから溶く
高温では麹の香りが飛びます。菌そのものは加熱で死にますが、発酵で生まれた成分は残ります。
05
二週間かけて増やす
急に食物繊維を増やすとおなかが張ります。ゆっくり慣らしてください。
まとめ
菌は住み着かないので、毎日つづけることに意味があります。
量より種類。ひとつを大量にではなく、味噌・納豆・漬物・甘酒をそれぞれ少しずつ。
そして、菌のエサを忘れないこと。野菜・海藻・きのこ・豆・穀物がなければ、菌は働けません。一汁三菜という形は、それを自然に満たしています。
台所の発酵食品を、ひとそろい
味噌・ぬか床・甘酒。種類を増やすところから。
表示価格は税込です。在庫状況により品切れの場合がございます。
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