
本葛 ※写真はイメージです
「葛粉」と「本葛粉」は、別の商品です。一文字違うだけで、原材料がまるごと入れ替わることがあります。値段も十倍近く開く。そして、その差がどこから来ているのかは、袋の裏を見れば分かります。知っておくと、葛湯も、あんかけも、思っていたものと違う、ということがなくなります。
本葛粉と葛粉は、原材料が違う
本葛粉は、葛の根から取ったでんぷん100%のものだけが名乗れます。一方「葛粉」とだけ書かれたものは、さつまいもでんぷんやじゃがいもでんぷんを混ぜたものが大半です。
混ぜものが悪いという話ではありません。価格を抑えるための工夫でもあります。ただ、固まり方も、口の中でのほどけ方も、まったく違います。
「本」の一文字が、原材料100%かどうかの表示です。
確認の方法は単純です。原材料欄に「葛根でん粉」とだけ書いてあれば本葛。「甘藷でん粉」「馬鈴薯でん粉」が並んでいれば、それが主体です。順番は多い順なので、一番前に何が来ているかを見てください。
関東の「くず餅」は、葛ではない
東京のくず餅は、小麦でんぷんを発酵させて作ります。葛は一切入りません。白く不透明で、四角く切って、きな粉と黒蜜をかけるもの。あれです。
対して関西の葛餅は、本葛を溶いて練ったものです。透明で、ぷるりとしていて、作ってすぐでないと白く濁る。名前が同じで、中身も作り方も別の菓子です。
関東のくず餅は江戸期に小麦の産地で生まれたもので、一年以上かけて乳酸発酵させるという、日本の和菓子では珍しい製法をとります。偽物ではなく、独立した食べ物です。

なぜ高いのか
葛は栽培されていません。山に自生しているものを掘ります。つる植物としてはどこにでもあるのに、根からでんぷんを取ろうとすると、途端に手がかかる。
- 冬にしか掘れない
- でんぷんが根に溜まるのは、葉が落ちてからです。掘るのは真冬、雪のある斜面で、人力で。機械が入れる場所に都合よく生えてはいません。
- 根が深い
- 太い根は地中深くまで伸びます。一本を掘り出すのにかかる時間が、そのまま原価になります。
- 取れる量が少ない
- 根の重さに対して、でんぷんとして取れるのはおおむね一割前後です。
- 晒しに時間がかかる
- 砕いて水にさらし、沈めて、上澄みを捨てて、また水を替える。これを何度も繰り返して不純物を抜きます。吉野晒しと呼ばれる工程です。最後は自然乾燥で、数か月かかります。
掘り手の高齢化で、国産の本葛は年々減っています。値段の理由は、原料そのものが減っているという事情でもあります。
国内でつくり続けている蔵については、「廣八堂」とは?福岡1875年創業、生産量日本一の本葛に書いています。
使ったときに何が違うか
本葛は、温度によって二段階で変わります。加熱すると透明になり、とろみがつく。そして冷えると、そのまま固まる。この「冷えて固まる」が、他のでんぷんにはあまりない性質です。
- とろみをつける
- あんかけ、汁物。片栗粉より時間が経っても水っぽくなりにくい。ただし本葛は一度沸かさないと透明になりません。
- 固める
- 葛餅、ごま豆腐、葛切り。冷やすと弾力のある固まりになります。片栗粉ではこうなりません。
- 葛湯
- 湯で溶いて飲むもの。湯を注ぐだけでは固まりません。鍋で練ってください。透明になった時点が出来上がりです。
- 揚げ衣
- 葛粉をまぶして揚げると、うすい膜が張ったように仕上がります。葛あんかけの唐揚げなど。
使うときは必ず水で溶いてから。本葛は塊で売られていることが多いので、先に指で砕き、冷水でよく溶かしてから鍋に入れてください。熱いところに直接入れるとダマになります。
葛湯が、薬のように扱われてきた理由
葛は、食べ物であると同時に生薬でもあります。漢方でいう葛根がそれで、葛根湯の名はここから来ています。ただし葛根湯に使うのは根を乾かして刻んだもので、でんぷんを取った本葛粉とは別物です。
本葛粉のほうにその成分がそのまま残っているわけではありません。でんぷんを取り出す工程で、水に溶ける成分の多くは流れていきます。「葛湯を飲めば葛根湯と同じ」ということにはなりません。
それでも葛湯が長く飲まれてきたのには、別の理屈があります。とろみのついた温かいものは冷めにくく、胃に長くとどまります。食欲がないときに、水分と糖を無理なく入れられる。離乳食や病後の食事に使われてきたのは、この扱いやすさのためです。
効能として期待するより、消化の負担が軽い糖質として見たほうが、使い道がはっきりします。
片栗粉との使い分け
片栗粉はじゃがいもでんぷんです。とろみは早くつくが、時間が経つと水が出て緩む。再加熱すると戻りきらない。
本葛は、とろみがつくまで少し時間がかかる代わりに、安定しています。作り置きのあんや、冷やして出す料理では差が出ます。逆に、炒め物の仕上げに素早くとろみをつけるなら、片栗粉のほうが合理的です。
値段が十倍違うので、全部を置き換える必要はありません。冷やして食べるもの、透明に仕上げたいもの、そして体を温めたいときの葛湯。ここだけ本葛にする、という使い方で十分です。
本葛を買うときに見るところ
01
原材料が「葛根でん粉」だけか
ここが一行で終わっていれば本葛です。他のでんぷん名が並んでいれば、混合品です。
02
「本」の字があるか
「葛粉」と「本葛粉」は別の商品名です。
03
国産かどうか
中国産の葛粉も流通しています。産地表示のあるものを選んでください。
04
塊か粉末か
塊のほうが乾燥が自然で、香りが残ります。溶かす手間を省きたいなら粉末。用途で選んで構いません。
05
用途に対して量が合っているか
葛湯なら一回に10g前後です。少量から試したほうが、使い切れます。
この記事で触れた本葛
原材料が葛根でん粉100%のものを選んでいます。
表示価格は税込です。在庫状況により品切れの場合がございます。
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