
米粉 ※写真はイメージです
パンが膨らまない。天ぷらがベタつく。米粉がうまくいかないとき、多くの場合原因は腕ではなく、粉の側にあります。米粉は「米を粉にしたもの」という一語でまとめられがちですが、実際には用途がまったく違う別の粉が、同じ名前で売られています。その違いを決めているのは、産地でも品種でもなく、粒の細かさです。
米粉には、規格がない
小麦粉には薄力粉・中力粉・強力粉という分類があります。たんぱく質の量で分かれていて、袋を見れば用途が分かる。ところが米粉には、この種の共通の分類が存在しません。
パッケージに書いてあるのは「米粉」の二文字だけ、ということが珍しくない。だから、パン用の粉で天ぷらを揚げ、菓子用の粉でパンを焼くということが起こります。うまくいかなくて当然です。
米粉がうまくいかないのは、腕ではなく粉が違うからです。
違いをつくっているのは、粒の細かさ
米粉の性質を決めるのは、粒子の大きさと、でんぷんの傷つき具合です。製粉するとき、米の粒は砕かれると同時に、内部のでんぷんも壊れます。この壊れたでんぷんを損傷でんぷんといいます。
損傷でんぷんが多いと、水をよく吸います。吸いすぎると生地がべたつき、パンなら膨らまず、天ぷらなら衣が重くなる。逆に少なければ、さらりとした軽い仕上がりになります。
そして損傷でんぷんの量は、製粉のしかたで決まります。ロールで挽けば摩擦と熱で壊れやすく、気流粉砕のように風で砕く方法なら壊れにくい。同じ米から、性格の違う粉ができるわけです。

手元の粉を見分ける
袋に用途が書いていなくても、指先で分かります。
- さらさらして、指の間から落ちる
- 粒子が粗め。天ぷらや唐揚げの衣、ムニエルの打ち粉に向きます。べたつかず、揚げ上がりが軽い。
- しっとりして、指に少し残る
- 粒子が細かい。菓子やケーキ、お好み焼きなど、しっとりさせたいものに。
- きめが細かく、粉が舞う
- パン用として調整されたものが多い。加水量の指定があるはずなので、レシピの水分量を必ず守ってください。
迷ったら、少量を水で溶いてみてください。すぐにとろみがつくものは吸水が多い粉、しばらくさらさらしているものは吸水が少ない粉です。
小麦粉のレシピを、そのまま置き換えない
米粉は小麦粉の代用品ではありません。いちばん大きな違いはグルテンです。
小麦粉は水を加えて練るとグルテンができ、生地がつながります。パンが膨らむのも、うどんがのびるのも、この網目のおかげです。米粉にはこれがありません。だからつながらないし、膨らみにくい。
裏を返せば、練っても固くなりません。小麦粉は混ぜすぎると重くなりますが、米粉はその心配がない。天ぷらの衣を「混ぜすぎないように」と気を遣う必要がなくなります。
そして油を吸いにくい。粒子が水を抱えたまま揚がるので、衣が軽く仕上がります。揚げ物で米粉が選ばれるのは、健康のためというより、この食感のためです。
置き換えるときの目安
- 天ぷら・唐揚げの衣
- そのまま置き換えて構いません。水は少し控えめに。米粉のほうが吸水が速いので、小麦粉と同じ量だと緩くなることがあります。
- ホワイトソース・とろみづけ
- 置き換えやすい用途です。ダマになりにくく、冷めても固まりにくい。
- お好み焼き・チヂミ
- 向いています。外が軽く、中がもっちりします。
- ケーキ・マフィン
- 膨らみは小麦粉より控えめ。ベーキングパウダーを使うレシピなら成立します。
- パン
- 専用粉を使ってください。汎用の米粉では膨らみません。グルテンを足す配合もありますが、それはもう別の話になります。
米粉を買うときに見るところ
01
用途が書いてあるか
「パン用」「菓子用」と明記されたものは、粒度が調整されています。書いていなければ汎用品と考えて、揚げ物やとろみづけから試すのが安全です。
02
原材料が「米」だけか
増粘剤やグルテンが加えられているものもあります。粉そのものを知りたいなら、まず米だけのものを。
03
うるち米か、もち米か
「白玉粉」「もち粉」はもち米が原料で、別の粉です。うるち米の米粉と同じようには使えません。
04
玄米か、白米か
玄米粉は糠の風味と色が残ります。菓子に使うと香ばしく、料理では味が立ちすぎることもあります。
05
開封後は密閉して冷蔵
米粉は小麦粉より油脂が酸化しやすく、においを吸います。常温の戸棚に置きっぱなしにしないでください。
最初の一袋は、揚げ物から
米粉を試すなら、パンからではなく揚げ物から始めるのが確実です。失敗しにくく、小麦粉との違いがはっきり分かるからです。
鶏もも肉に塩をして、米粉をまぶして揚げる。それだけで、衣が薄くパリッとして、時間が経ってもべたつきにくいことが分かります。
そのうえで、菓子、そしてパンへ。粉を変えるたびに結果が変わるのが米粉です。一袋ごとに性格が違うと思って付き合うと、うまくいきます。
米粉は、思ったより傷みます
小麦粉より、米粉のほうが管理に気を使います。粒子が細かいぶん空気に触れる面積が大きく、においも吸いやすい。玄米粉なら糠の油分があるので、なおさらです。
開封したら密閉して冷蔵庫へ。袋のまま輪ゴムで留めて戸棚に、という保存では一ヶ月もすると香りが変わってきます。揚げ物に使ったときの「なんとなく古い油のような匂い」は、油ではなく粉が原因のことがあります。
そして虫。粉類は袋の縫い目から虫が入ることがあります。常温で長く置くなら、密閉容器に移し替えるのが確実です。使い切れる量を買うのが、結局いちばん美味しい。
もうひとつの事情
米粉がここ数年で棚に増えたのには、食べる側だけでなく作る側の事情もあります。米の消費量は長く減りつづけてきました。主食として食べられる量が減れば、田んぼは余ります。
その米を粉にして、パンや菓子として食べてもらう。これは国産の米を使いつづけるための現実的な道でもあります。小麦の多くを輸入に頼っている日本で、米粉は数少ない「国産に置き換えられる粉」です。
健康のため、アレルギーのため、という理由で語られがちな米粉ですが、田んぼを続けるための粉でもある、という見方をしておくと、棚の前での選び方が少し変わってきます。
米粉のある棚から
当店で扱っている米粉と、米粉を使った加工品です。
表示価格は税込です。在庫状況により品切れの場合がございます。
ほかの記事
・甘酒は二種類ある|米麹と酒粕の違い・腸活は「量」より「種類」|菌のエサという見落とし・塩麹は塩ではない|肉がやわらかくなる仕組み・旬は三つある|走り・盛り・名残の見分け方実りの手帖の記事一覧へ
この記事に関連する商品
▶ 有機・無添加の食品をオンラインストアで見る
コメント