
味噌 ※写真はイメージです
「無添加」と書かれた味噌を選んでいる方は多いと思います。ところが「無添加」という言葉には、法律上の定義がありません。何を入れていないのかは、書いた側が決めていい。だから同じ「無添加」でも、中身はかなり違います。見るべきは表側のうたい文句ではなく、裏の原材料欄にある三つの言葉です。
「無添加」は、何も言っていないことがある
食品表示のルールでは、「無添加」の対象を書くことになっています。つまり「◯◯無添加」という形が本来です。ところがその◯◯が何なのかは、作り手が選べます。
着色料を使っていないから「無添加」。保存料を使っていないから「無添加」。どちらも嘘ではありません。ただ、買う側が想像している「何も足していない味噌」とは、別のものかもしれない。
「無添加」は結論ではなく、見出しです。中身は裏面にあります。
原材料欄で見る三つの言葉
味噌の原材料は、本来なら「大豆、米(または麦)、食塩」だけで足ります。ここに何かが足されているとき、それは味のためか、止めるためか、どちらかです。
- 酒精
- エタノールのことです。味噌を殺すためではなく、発酵を止めるために入れます。袋詰めした味噌は容器の中でも発酵を続け、炭酸ガスで袋が膨らむ。流通の都合でこれを避けたいときに使われます。体に悪いという話ではありませんが、酒精入りの味噌は「生きていない味噌」です。
- だし入り
- かつおエキス、昆布エキスなどが入っています。便利です。ただし塩分と旨味調味料が一緒に設計されているので、味噌汁の味は作り手が決めた味になります。出汁を自分で引く人には、二重になります。
- 調味料(アミノ酸等)
- グルタミン酸ナトリウムなどです。短期間で仕込んだ味噌は旨味が乗りきらないので、これで補うことがあります。味噌そのものの熟成を見たいなら、ここは空欄であるほうがいい。
「天然醸造」は、「無添加」とは別の話
「天然醸造」には、はっきりした基準があります。温度を人為的に上げて熟成を早めないこと、そして酵素剤や添加物で味を調えないこと。つまり時間のかけ方についての言葉です。
速醸という方法では、醸造室を温めて数週間から数か月で仕上げます。天然醸造は、蔵の温度のまま、夏を越して置く。同じ原材料でも、色も香りも別物になります。
だから「無添加」と「天然醸造」は、両方書いてあって初めて意味がつながります。片方だけなら、もう片方がどうなっているかは書かれていない、ということです。

麹歩合という、書かれていない数字
味噌の甘さとコクを決めているのは、大豆に対する麹の量です。これを麹歩合といいます。大豆10に対して麹が10なら十割麹。麹が多いほど、でんぷんが糖に変わる量が増えて、甘く、香りが立ちます。
ところが麹歩合は、ほとんどの袋に書かれていません。原材料欄の順番でうっすら分かることはあります。「米、大豆、食塩」のように米が先に来ていれば、麹が大豆より多い。
四倍麹という仕込みもあります。大豆に対して麹を四倍入れるもので、砂糖もみりんも使わずに甘い味噌になる。味噌汁より、そのまま野菜につけたり、和え衣にするほうが向いています。
この味噌の作り方については、麹が豆の4倍という味噌で詳しく書いています。
米味噌・麦味噌・豆味噌は、大豆の違いではない
この三つは、麹を何に生やしたかの違いです。大豆はどれにも入っています。米に麹菌を生やせば米味噌、麦なら麦味噌、大豆そのものに生やせば豆味噌です。
豆味噌だけは、麹をつくる材料も大豆なので、でんぷんがほとんどありません。だから糖に変わる量が少なく、甘みが出ない。代わりにたんぱく質が多いので、旨味と渋みが濃く出ます。八丁味噌がそれです。
麦味噌は麦の香りが立ち、塩分が控えめなものが多い。九州や瀬戸内で使われてきました。味噌が地域で違うのは、その土地で余っていた穀物が違ったからです。米が貴重な土地では麦を、どちらも回せない土地では大豆そのものを麹にした。
だから「どれが本格的か」という問いは成り立ちません。合わせ味噌が広く使われるのも、この三つが役割の違う調味料だからです。
色の濃さは、古さではない
味噌が濃い茶色になるのは、メイラード反応です。アミノ酸と糖が反応して色素ができる。時間と温度で進みます。
だから色が濃い味噌は、長く置いたか、温度の高い環境で仕込んだかのどちらかです。白味噌が白いのは若いからで、赤味噌が赤いのは熟れているから。どちらが上等という話ではなく、用途が違います。
- 白い・淡い
- 麹が多く、熟成が短い。甘みが前に出ます。和え物、魚の西京漬け、上品な椀物に。
- 中間の色
- もっとも汎用。日常の味噌汁はここが扱いやすい。
- 濃い赤褐色
- 長期熟成か豆麹。塩味と香りが強く、少量で味が決まります。煮込み、田楽、合わせ味噌の片側に。
味噌を買うときに見るところ
01
原材料が三つで終わっているか
大豆・米(麦)・食塩。ここで終わっていれば、あとは熟成の話だけになります。
02
酒精が入っていないか
入っていれば発酵は止まっています。常温で置いておいても変化しない代わりに、味も動きません。
03
「天然醸造」と書かれているか
温度をかけて早回ししていない、という表示です。「無添加」だけでは、ここは分かりません。
04
米が大豆より先に書かれているか
麹のほうが多いということです。甘く、香りが立ちます。
05
容器にガス抜きがあるか
生きている味噌は袋の中でもガスを出します。小さな穴やバルブがついているのは、発酵を止めていない証拠です。
買ったあと、どう置くか
生きている味噌は、冷蔵庫に入れてください。常温だと熟成が進み、色が濃くなり、塩辛く感じるようになります。冷蔵なら止まるわけではありませんが、ゆっくりになる。
表面が黒くなるのは、酸化です。カビではありません。味は落ちますが、削れば下は問題なく使えます。ラップを密着させておくと起きにくい。
白い粒が出ることもあります。これはチロシンというアミノ酸の結晶で、熟成が進んだ味噌に出ます。取り除く必要はありません。
この記事で触れた味噌
原材料を確かめてから選びたい方へ。
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